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簡易的な製本でどこまでプロの仕上げに近づけるか


 学年末の恒例行事に職員文集がある。学校によっては、制作を取りやめてしまったところもあるようだが、1年間いっしょに生活してきた同僚の意外な一面を発見したり、玄人はだしの専門的なことを教えて頂いたりと、やはり読むのは楽しい物である。自分の所属している学校では、昨年度から製本屋に出さずに自前で製本をすることになり今年は2年目となった。(始まりは、最終原稿提出者だった自分が製本しますと宣言したためだったような気がする)

先に、利点・欠点を羅列してみる。

利点 欠点
○コストはずいぶん安くあがる。本職に頼むと、25冊の製本で一冊あたり、約300円。自分たちでやれば、材料代のみ。
○特に店も忙しくバックオーダーを抱えるようなこの時期でも、数時間で仕上がる。本職に頼むと、1週間くらいはかかることもよくある。
○まずは、手間と時間がかかる。この人的リソースをペイできるかどうかは、職場の雰囲気などにもよるだろう。
○製本道具が必要となる。
○仕上がりが安定してよい物になるかどうかが何とも言えない。

そこで今回、2年間の試行錯誤でためたノウハウをまとめておくことにする。

まずは、原稿を印刷して2つ折りにしたものをホッチキスで綴じ込む。今回は2カ所をとめたが、これが一般的であろう。本式の製本なら、ホッチキスではなく、凧糸で縫うようにして綴じることになる。この際に一番大事なところは、開く側(写真では左側)がぴっちりとそろっていること。折った部分をしっかり押さえてきれいに並ぶようにしてからホッチキスで綴じる。ホッチキスの針は縁(写真では右側)から8mmぐらいのところにした。右側のそろい具合によって調整するが、できるだけ縁に近いところの方が見栄えはよくなる。

綴じたあとは、固い台(この場合は大きな石を新聞紙でくるんである)の上でホッチキスの針が飛び出している側をげんのうでたたき、針の飛び出しをなくして平らにする。

綴じあがった本体の厚みを測り、表紙紙の背の部分の厚みを決める。それをマークして表紙紙をコの字型に折る。今回は裁断機に挟み、薄いプラスチック(写真では名刺型のCD-ROM)を押しつけてなぞることにより折り目を付けた。

ホッチキスの針が隠れるくらいにのりを塗って、中表紙を付ける。今回は白い上質紙をそのまま貼り付けた。その後、ホッチキスの側を裁断機で真っ直ぐに切り落として、背中側をそろえる。ホッチキスの針から5mmくらいのところで切り落とせばよかろう。

事前準備として、綴じた本体と表紙を接着する樹脂を用意する。ここが、今回の製本方法のオリジナルの部分であり、肝でもある。ホットメルト用のグルースティック(ホームセンター等に売っている10本で200円程度)をホットプレートの上に並べて溶かす。本の高さくらいにのばしたらいったんさましてから本体の厚みと同じ幅に裁断する。
今回は、8mm幅の物を25冊だったが、40本ほど使った。(作り終わってみたらかなりあまったのだが)


表紙に作った接着用樹脂をのせて、背表紙側からホットプレートで加熱する。今回は160度くらいで加熱した。焦げる前に樹脂が再び溶けて液状になるようにあんばいを見ながら作業する。溶けたところで、本体を押し当てる。その後で、ぴったりと表紙を綴じて台の上でとんとんとそろえるように衝撃を加える。これで樹脂が本体の中にしみこみ、さらに横の部分にも回り込むので表紙も開きすぎることがなく本の形になる。去年は2人くらいでやったが、今年はたくさんの人が手伝ってくれたので、わいわいやりながら楽しく作業できた。このあたりの人的環境が実はとても大切な要素だったりする。

表紙の長さは本体にそろっていないので、閉じた状態で定規を当てて、本を開いて縁をカッターで切り落とす。


最後に、上下を裁断機でそろえて完成。もちろん切り落とす際には最初に片側を全部そろえて落としてから、裁断機のガイドをあわせて、もう片側を切り落とすようにすれば、効率もよいしすべての本の高さが同じにそろうことになる。最後は完成した本を積み上げたところ。いやぁ、お疲れ様。特に背中の上下の部分にきちんと樹脂がとけ込んで隙間がなく仕上がると、きれいに見える。みんなで、「うん、これならプロに頼んだのとかわらないね。」

できあがった本を前に、物作りの大切さと中学校技家の大切さを一席ぶたして頂いてすべてが終了。これからは、ついつい本職の閉じた本も仕上がり具合をチェックするのが癖になったりして・・・・



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